【コラム】32歳代理店マンのリアルなデート

港区男子。
普通のサラリーマンでは考えられないほどの年収や地位を手にし、港区で生活する男たち。
全てを手にしているかのように見える彼らの幸せは一体どこにあるのか…?華やかな世界に住まう男の“光と陰”、“愛と嘘”、“欲望とプライド”とは…?!

<今週の港区男子>
名前:K.M
年齢:32歳
職業:大手広告代理店勤務
年収:1,000万以上


|大井町に舞い降りる可憐な美女

5年前、人肌恋しくなった秋。3年間苦楽をともにした、最高の女と過ごすには最適な一日。
その日は二人で秘密裏に有給をあわせ、大井町に集合した。

昼食は雑多なラーメン屋。長い一日の始まり。スタートはあえて着飾らなくてもいいのだ。
腹もほどほどに満ち、雑談にひとしきり花を咲かせたあと、本格的な大人デートが始まった。

まずはジャブとばかりに予約していた劇団四季。当日はライオンキングだった。彼女が一度は見てみたいと言っていた、劇団四季。大井町の集合なのだから、少しは予測されただろうか。そんな気恥ずかしさもややありながら、それでも今日は最高の1日にしたい。S席の予約をもってエスコート。

自分自身、劇団四季にもディズニーにも造詣は深くないが、年甲斐もなくはしゃいでしまう。
案外子供みたいな目すんねんな。そんな彼女の声を聴きながら、ひとしきりショーを楽しむ。


|タクシーで誘なう、その先には…

普通のデートなら、これがクライマックスだろう。だが、今夜は違う。これはむしろ前座。ここからがメインだ。

大井町で何を食べるの?

そんな彼女の心配をよそに、予約していたタクシーに乗車。20分ほどの移動を経て、到着したのはそう。30歳までに女性が来たいランキング上位を常に独占している店。Joël Robuchonだ。

店に入ると、なるほどドレスコードには意味があるんだな、と思えるほどの格式ばった雰囲気。それでいて会話ができないほどの厳かさはない。ジャケットを羽織った男性と、ドレスアップした女性たちの空間。上流を感じるには、これ以上ない。

着席早々メニューが渡される。男性には値段付き、女性には値段がついてないメニューを渡す心配りもにくい。

え、値段書いてないけど大丈夫?そんな彼女の不安げな声もこそばゆい。
大丈夫、今日は贅沢しようや。その一言をさらっといえるだけでも、港区男子になってよかったと思える瞬間かもしれない。


|珠玉のフルコースが縮める二人の距離

コースで出てくるのは見たこともない料理・味わったこともない味。

来店前に知っていたスペシャリテも、実際に味わってみると驚きの感想しかでない。

色物だろう、フレンチということでお高くとまっているだけだろう。二人のそんなちょっと斜に構えた感想を一笑に付すような艶やかで繊細な味付け。キャビアをうまいと思ったのは、思えばここが初めてかもしれない。

フレンチで春巻きが出てくるなんて想像もしていなかったが、これまた期待を超えるエビ感。よもや、中華で食べるよりも春巻きに心惹かれるとは思わなかった。

二人ともアルコールは飲めない質。それでも、確実に二人の空気は酔っていた。場の雰囲気。甘美な味わい。触れたこともない食体験に、心が躍る。

極めつけはデザート。サービングスタンドにこれでもかと載せられたデザートを好きなだけ。

童心に戻り、あれもこれも?でもおなかもいっぱい?そんな風に会話も弾む。

食後のコーヒーとともに今日一日の想い出を振り返り、名残惜しいが12時の鐘がなる。
そろそろお別れの時間だ。美食に舌鼓を打ち、今日はこれで解散かな。

でも、目の前にはウエスティンがある。

とっておきの日なら、部屋とってるよ?が許される。
バーもある。誘う口実など、いくらでもあるのだ。二人の夜は、まだ始まったばかり——-