【コラム】水槽の前で合コンをする彼女は15年前とは違っていた

港区男子。
普通のサラリーマンでは考えられないほどの年収や地位を手にし、港区で生活する男たち。
全てを手にしているかのように見える彼らの幸せは一体どこにあるのか…?華やかな世界に住まう男の“光と陰”、“愛と嘘”、“欲望とプライド”とは…?!

<今週の港区男子>
名前:K.S
年齢:30歳
職業:大手広告代理店勤務
年収:1,000万以上


「お前が6年のころ好きやった加藤、今俺の同期と合コンしてるらしいで」
2019年の、初夏。小学校の同級生の男4人で飲んでいる時に、Sが興奮気味に僕に伝えてきた。加藤さん(仮名)は小6で同じクラスの女子。男子に混ざって遊ぶタイプで、気さくな笑顔に惹かれて好きになった。今はテレビ局に勤めているという噂は聞いていたが…まあ、お互いアラサーだし、合コンぐらいはやるだろう。

しかし、状況はあらぬ方へ展開する。
Sに対し、Sの同期と加藤さんが合流を提案したのだ。

「え、もしかして全然盛り上がってないの?」「それか、めっちゃちゃらい…?」という疑念を抱えながらも、恵比寿の「ラグシス」へ向かった。

入った瞬間目に入ったのは、巨大な水槽。
水族館と錯覚するほど大きな水槽の前に、男女4人が鎮座していた。
その中に、加藤さんはいた。あの頃とはもちろん違うけれども、笑顔に面影はある。
「お、澤田君じゃーん! うち、6年のころ好きやってーん!」
あの頃聞きたかった言葉を、最も聞きたくない場所、聞きたくないテンションで聞いた。
でも僕は、情けなく笑っていた。
「え! 僕も僕もー!」
そう、15年も経っているのだ。ここからは大人として、あの頃を笑いながら話そう。

その後、加藤さん呼びかけで始まった飲みゲームで吐くほど飲まされ、逃げるようにタクシーで帰った。思い出話は全然できていないし、普通にもう関わりたくない。